吉田みきと

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医療改革

医療改革 市立共立病院についての考察

結論

共立病院の単なる物理的な建替えのみでは、現在見られる問題の本質的な解決につながらず、新病院でも同様の経営上の問題が発生する恐れが高い。問題発生の底流にある本質を洗い出し、運営の仕組みを変えた上で、浜通り地域医療の中核を担う病院として再出発すべきと考える。

財務状況

共立病院は、医療現場の懸命な努力にもかかわらず、継続して年間約20億円の損失が計上され、10年間で199億5千6百万円もの市税が投入されている(いわき市民税の1年分に相当)。年間の市税歳入が400億円に満たないことを考慮すると、ひとつの市立病院に対する当該負担水準は許容できない。
単位:億円
出典:平成21年度の決算見込について(平成22年3月28日第3回経営評価委員会)、平成24年度予算書(平成24年3月)、いわき市病院事業 中期経営計画(平成24年6月)

いわき市は平成17年度に「市立病院改革に係る基本方針」、平成20年度に「市立病院改革プラン」を提出したが、目立った改善はみられなかった(計画倒れ)。
単位:億円

SWOT 現状分析

他の中核都市と異なり、いわき市内には共立病院と直接競合するような大病院(日赤病院、済生会等)がないという大きな競争上のアドバンテージがあるにもかかわらず、その強みが生かされてこなかった。

市民から直接聞こえてくる声

  • 緊急医療の受入れ態勢が不足
  • 診療待ち時間の長さ
  • ドクターの量的不足
  • 老朽化しており、耐震性の保証のない施設
  • 非効率的な動線オペレーション
  • 医療スタッフのマナーの低下
  • 硬直的な給与体系に見合わない医療スタッフの職務内容

本質的な問題

  • 共立病院の市場ポジショニングが総花的であり、明確でない
  • 病院全体の運営目標が不適切、もしくは医療スタッフと共有化されていない
  • 医療スタッフ及び経営陣の評価システムが適切でない
  • 経営陣が経営責任を取る仕組みになっていない
  • 経営陣が医療・経営の専門家でない
  • 損益計画が予測の積み上げで作成されておらず、こうあってほしいという希望に基づいて作成されている
  • 診療科の数に対する常勤医師数が不足
  • ドクターにとって魅力的・働き甲斐のある職場ととらえられていない

改善案

  • 共立病院の市場ポジショニングを明確にする(例:第3次救急、専門医療)
  • 病院全体の適切な目標を設定し、それに向けての継続的改善活動を実施(例:待ち時間、1日当たりの外来数、CS調査アンケート等)
  • 医療スタッフの適切な評価と表彰制度(例:360度評価等)
  • 適切な経営陣の配置と経営責任の明確化(例:スタッフの身分を保証した上で独立行政法人制度の導入、外部人材を含むマネジメントコミッティーの定期開催等)
  • 医療経営プロフェッショナルの内部養成(例:当初は外部医療コンサルを補助に付け、マイルストーンごとのチェック等)
  • 建設計画と開業後のオペレーションとのリンク(例:基本設計に現場医療スタッフのニーズ及び外部医療コンサル会社の提案を反映させた上で、設備設計に入る等)

最後に

ピンチはチャンスといいます。震災を経た今こそ、既存の価値観を超え、持続可能な理想の地域医療を目指しましょう!いわき共立病院こそ、それが実現可能なインフラだと信じています。